SEASON1 第十一回目
絵画の状態調査における用語
絵画の状態調査の際には、様々な専門用語を用います。今回は、それらの用語を簡単に解説してご紹介します
支持体の状態
<板の場合>
- 反り・ひび・割れ (warped, check, split)
- 板の乾燥に伴って、または温湿度の変化により板が歪むために起こる現象。
- 虫害・黴害 (insect, mold)
- 虫害により板がぼろぼろになってしまうこともある。
<キャンバスの場合>
- たるみ・しわ (slack, draw/ undulation/ distortion)
- ふくらみ・へこみ・押し傷・穴 (bulge, dent, crease/ indentation, hole)
- 何かが接触したために起きることが多い。
- 裂け (tear)
- 脆い (brittle)
- キャンバスが酸化して弱くなった状態である。
- 虫害・黴害 (insect, mold)
- カビは、キャンバス裏面に点状のしみとなって見られることが多い。
- 汚れ・しみ・変色 (grime, stain, discoloration)
- 画面側の印象には関係ないことが多い。
グランド層・絵具層の状態
- 亀裂 (cracks)
- 絵具の乾燥に伴って絵具層が縮む際に発生する場合や、キャンバスの伸び縮みなどによって絵具層が割れて起こる場合がある。
- 浮き上がり (cleavage)
- 絵具層やグランド層が、部分的に剥がれて持ち上がってくる状態である。
- 層間剥離(ブラインド・クリベージ) (blind cleavage)
- 亀裂が全くない部分で、絵具層の下に起きた層間の剥がれのことである。
- 剥落 (loss)
- 火ぶくれ (brister)
- ちりめん皴 (wrinkle)
- 擦れ (abrasion)
- 多いのは、額が接触していた縁に沿った部分に見られる額擦れである。
- 引っ掻き傷 (scratch)
- 爪や先が尖ったものによる傷。
- 白亜化(ブランチング (blanching)
- 絵具が白っぽくなってしまう現象。湿気が関係していると考えられている。ニス層にも起きることがある。
- しみ (stain)
- 何らかの汚れがしみになって、容易に取り除けなくなってしまう状態。
- 変色・褪色 (discoloration, fading)
- 有機顔料に多い。光が当たることにより、顔料の色が変色したり褪せてしまったりする。元にはもどせない。また、カビにより、絵具層の広範囲にわたって変色が起こる場合もある。
- ペンティメント (pentimento)
- 補彩 (inpainting)
- 修復処置で剥落部に色を入れること。
- 虫害・黴害 (insect, mold)
- 絵具のメディウムをえさとしてカビが発生する場合がある。カビが発生した部分には絵具の欠損や色の褪色が起きることがある。
- 結晶 (efflorescence)
ニス層(表面)の状態