SEASON1 第十三回目
絵画の科学的調査2(紫外線・赤外線・X線)
科学的調査の2回目は、紫外線、赤外線、X線を使った調査方法をご紹介します。
5. 紫外線による調査
可視光線より短い波長の紫外線は、自然にも発生しますし、太陽光線にも含まれています。また、炭素や水銀などの元素を電気的に反応させることにより、発生させることができます。絵画の観察には、石英(クオーツ)のチューブの中に入れた水銀アークが使われることが多いようです。
紫外線に反応して蛍光を発する物質を見ることができます。紫外線蛍光写真を撮影すると、蛍光を記録することができます。
主に、次のような蛍光が観察できます。
- 天然樹脂のニスは黄緑色の蛍光を発する。
- 天然樹脂のニスの上になされた補彩は、暗く見える。
- いくつかの顔料は、独特の蛍光色を発する。(ジンクホワイト:明るいレモンイエロー、マダ−:サーモンピンクなど)
- カビやカビによるしみは蛍光する。
6. 赤外線カメラ、赤外線写真による調査
赤外線は、可視光線より波長が長いので、肉眼では見えません。赤外線用のフィルムに写すことによって、赤外線による像を見ることができます。赤外線は絵画表面の層を透過します。
炭素を含む材料による線、特に下描き線の観察に用いられることが多い調査方法です。また、補彩などの観察にも適しています。
風景画の一部(クリックで拡大)
風景画の一部赤外線写真。馬に乗る人物見える(クリックで拡大)
7. X線写真による調査
X線は、紫外線よりも短く、γ線よりも長い波長を有しています。X線写真によって、物体内部の構造を記録することができます。絵画の場合は、絵具が厚く塗られた箇所や重金属を含む顔料(鉛を含む鉛白など)がX線を透過しにくくフィルムに白く写し出されます。
主に、剥落の箇所と画家によるイメージの変更を見るために使用されます。
顔部分写真(クリックで拡大)
顔部分X線写真。顔の向きの変更みえる(クリックで拡大)