SEASON1-14

株式会社 絵画保存研究所

Art Conservation Lab.

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更新日 2014-11-07 | 作成日 2008-04-01

SEASON1 第十四回目 

絵画の科学的調査3(分析Ⅰ 顔料:検鏡・XRF・XRD・電子顕微鏡)

今回は、顔料などの無機物質の分析方法をご紹介します。
 

1. 検鏡分析

少量の顔料を採取し、試薬を加えて顕微鏡の下で観察して顔料の同定を行う方法です。白い顔料の分析は、下の図のように行います。試薬と顕微鏡があれば行える簡易な方法です。

chart01.gif

bunseki01-a.jpg検鏡分析でみえる鉛白の樹状結晶(クリックで拡大)

2. 蛍光X線分析(XRF)

X線を試料にあてたとき、試料中の元素から発生する蛍光X線から、含まれる元素を同定する分析方法です。サンプルを採取して行う方法と、X線を直接絵画表面に当てて非破壊で行う方法があります。最近は、可搬型の蛍光X線分析装置も用いられます。
鉛や銅など顔料に含まれる元素は分かるのですが、構造までは分からないので、顔料名は色などの情報と合わせて推定することになります。

bunseki01-b.jpg可搬型蛍光X線分析装置

3. X線回折法(XRD)

X線を物質にあてたときに散乱されるX線回折の現象を利用した分析方法です。サンプルを少量採取して行うことが多いのですが、非破壊でできる場合もあります。顔料の構造が分かります。

chart02.gif

bunseki01-c.jpg可搬型X線回折分析装置

4. 電子顕微鏡

電子線を用いて試料の拡大像を得る装置です。試料を透過した電子を電子レンズを用いて結像する透過型、試料表面で反射した電子を結像する反射型などがあります。墨を高倍率で観察したときには、墨の丸い結晶をみることができます。

bunseki01-d.jpg墨の電子顕微鏡写真(x100,000)