SEASON1 第十五回目
絵画の科学的調査4(分析Ⅱ 有機物:FT-IR・GC-MS)
今回は、油などの有機物質の分析方法をご紹介します。
1. 有機物質の分析
絵画の場合の有機物質:油や膠などの媒材、ニス、有機顔料(染料を炭酸カルシウムなどの無機顔料に染め付けたもの)など
- ① フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)
- 有機化合物に赤外線をあてて、吸収される光の波長分布からその化合物の構造を知る方法です。
- 通常の分析装置の他に、顕微鏡に組み込まれ顕微鏡で観察しながら、有機顔料等にターゲットを絞って行える装置もあります。
- 何種類かの物質が混ざっていると、全てのもののピークが合わさってしまい、物質の同定が難しい場合もあります。
- 油のFT-IRスペクトル
- ② 質量分析法
- 有機化合物に電子線をあてて分解イオン化し、その分解物の質量分布から化合物の構造を知る方法です。
- この方法のうち、絵画の分析に用いられることが多いのは、ガスクロマトグラフィー・マススペクトロメトリー(GC-MS)です。
- ガスクロマトグラフィーは、物質を気化させて分離し、成分を検出する方法です。ガスクロマトグラフィーをマススペクトロメトリーと連結すると、ガスクロマトグラフィーで分離された各成分が直ちにマススペクトル分析法によって解析され、試料の化学構造に関する情報を得ることができます。初めて乾燥した油のフィルムの研究へ適用されたのは、1963年のことです。現在では、油以外にも、ニスなどの絵画材料の分析の際に使用されています。
- 油のGC-MSスペクトル