SEASON1 第二十四回目
現代絵画の修復
今回は、コレクター大学SEASON 1の最終回になります。現代絵画の修復について取り上げます。
現代絵画には、伝統的な素材による作品もありますが、形状、寸法、材料などが多種多様にわたる作品も数多く存在します。例えば絵画と工芸品(オブジェクト)を組み合わせた作品のような、いくつかのジャンルにまたがった作品もあります。
現代絵画例:水性絵具の上にメディウムを塗布(クリックで拡大)
20世紀には、具象画に加えて抽象画が登場しました。カンディンスキー(Vasily Kandinsky)が絵画創作を作曲になぞらえ、色と形によるコンポジション(作曲)としてとらえたのが始まりであると言われています。この流れは、後に、精神的側面を重要視する表現、純粋な幾何学的形態を追及する表現などに分かれました。ポロック(Jakson Pollock)のように、描く過程を重要視した絵画を制作した作家もいます。また、1960年代には、ソル・ルウィット(Sol LeWitt)らにより、作品の物質的・視覚的側面に対して観念的な側面の強調したコンセプチュアル・アートが登場しました。コンセプチュアル・アートでは、オリジナル性ではなく作家の意図が重要であるので、制作材料及び制作方法が指定されており、必要に応じて作品を壊して新たに制作するという方法がとられます。
現代絵画例:ポロック絵画部分(クリックで拡大)
このように、現代絵画の修復には、作品に対する基本的な知識が必要です。また、様々な材料とそれらの修復方法に対する知識も必要になります。個別に技法・材料に関する情報を収集し、分析してケースバイケースの修復で対応することが大切です。
混合絵具より媒材が分離し結晶化。顕微鏡写真(クリックで拡大)
砂入り絵具厚塗りによる絵具浮き上がり(クリックで拡大)