SEASON1 第五回目
絵画の種類と素材II(日本画)
日本画の技法は、7世紀半ばに仏教伝来とともに大陸から伝えられました。8世紀の終わり頃までには、現在の日本画とほぼ同じ技法が確立していたとみられます。それ以後、日本画は海外の文化の影響を受けながらも、基本的には日本独自の様式と技法を継承しつつ発展してきました。明治時代には、文明開化の刺激を受け水彩絵具などの新しい色材を用いる画家もみられるようになります。大正末期より開発されはじめた新岩絵具は、従来の日本画に変革をもたらしました。
- 支持体
- 和紙:どの時代にも多く用いられた。楮、三椏、雁皮の靭皮繊維を主原料とした手漉き紙。
- 麻紙:奈良時代に中国より日本へ渡来。以後10世紀もの間製造されなかった。大正15年以後に再び製造されるようになった。
- 絹:明治時代以前までは和紙同様に盛んに用いられた。その後徐々に需要が減少した。日本画用は絵絹と呼ばれ衣服の絹地とは異なる。
- その他:麻布、板(板戸、絵馬)
- 絵具
- A) 古く奈良時代より用いられてきたもの
- 天然岩絵具(群青、緑青、辰砂など):孔雀石や藍銅鉱などの天然鉱石から作られる。細かく砕かれた鉱石は、水簸法により粒度別に分けられる。
- 天然土性絵具(黄土、代赭、弁柄、白土、白亜など):天然の土からの微粒子顔料であり水簸法により作られる。黄土はどこでも入手できる材料であり、代赭は赤茶系の天然酸化鉄である。弁柄は緑礬を焼いて作る。白土や白亜は天然の粘土鉱物よりとられた。
- 人工微粒子絵具(墨、胡粉、人造朱、鉛丹など):墨の原料は松材や菜種油などを燃焼させて得る煤である。煤を膠と練って一定の形にし、灰の中で徐々に乾燥させて墨とする。胡粉は蛤や牡蠣貝を原料として作られる白色顔料で、室町時代に初めて使用された。
- 有機質の絵具(臙脂、藤黄、藍など):赤臙脂は、ラック・カイガラムシの幼虫の分泌物や雌のコチニール虫の腹中貯蔵色素より得られる。藤黄は東南アジアの海藤樹の樹液を採取したものである。藍は藍の葉を発酵させたものから得る。
- 金、銀(金銀泥及び金銀箔など):日本の金箔は世界で最も薄く1/10000㎜位の厚さである。金の延べ板を灰汁につけた和紙の間にはさみ、ハンマーで打って薄くしたものである。
- A) 古く奈良時代より用いられてきたもの
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- B) 大正末期以後の人造及び合成顔料
- 新岩絵具(人造顔料):硝子質の材料に金属化合物を加えて塊を得て、それらを砕いて作ったもの。
- 合成岩絵具:白色方解石の粉末に合成染料を着色したもの。
- 泥絵具:白土や胡粉を化学染料で染め付けたもの。
- B) 大正末期以後の人造及び合成顔料
- 仕立て
- 日本画は本紙のみで展示されることはなく、描かれてから手漉和紙によって裏打ちされ、軸装、額装、屏風、衝立などに仕立てられます。表装には金襴緞子に代表される高価な絹織物が用いられます。