SEASON1-9

株式会社 絵画保存研究所

Art Conservation Lab.

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更新日 2014-11-07 | 作成日 2008-04-01

SEASON1 第九回目 

油彩画の状態の見方 

美術品の状態は、次のA、B、Cの項目に分けて検討します。
 

A. 進行中の危険な状態
キャンバスの酸化、板の反り、絵具層の浮き上がり、結晶やカビの発生など

joutai-a-02.jpg層間剥離(クリックで拡大)絵が描かれてから30年もすると、麻布は赤褐色になって脆くなり、ついには指で裂けるほどになります。また、絵画のメディウムは、年月が経つと劣化し、柔軟性を失って接着力が低下します。すると、亀裂の部分で、絵具層の端が徐々にキャンバスから浮き上がりだします。板絵の場合は板から絵具層が剥離して、ふくらみとなることもあります。表面に結晶やカビが発生する場合もあります。これらの症状はすぐに進むことがあるので、注意が必要です。


joutai-a-01.jpg亀裂と浮き上がり(クリックで拡大)
joutai-a-03.jpg板の反り(クリックで拡大)
joutai-a-04.jpgカビ。絵画裏面(クリックで拡大)

B. 損傷
キャンバスの裂け、板の割れ、突き傷、焼け焦げ、引っ掻き傷、剥落、亀裂、絵具の変色など

joutai-b-01.jpg剥落(クリックで拡大)絵具層における亀裂や剥落などは、作品の構造上の欠陥や使用された物質の劣化に起因する場合が多いようです。修理の際の処置の失敗から生じている損傷もあります。絵具の褪色や変色は、絵具自体の性質にもよりますが、太陽光線や各種のガス、熱など、望ましくない環境の影響で起こることもあります


joutai-b-02.jpg突き傷、裂け(クリックで拡大)
joutai-b-03.jpg板の割れ(クリックで拡大)
joutai-b-04.jpg虫に食われた板(クリックで拡大)
 

C. 画調の変化
ニスの暗色化や黄変、埃の堆積、ブランチング(白亜化)など

joutai-c-01.jpgニスの黄化(クリックで拡大)過去の修理の際の補彩の変色やニスの黄化、汚れの付着によって画面の調子が大幅にかわってしまっている場合があります。しかし、変色した補彩やニスを除去すれば絵画の色彩が回復することがほとんどです。


joutai-c-02.jpgブランチング(白亜化)