SEASON2-4

株式会社 絵画保存研究所

Art Conservation Lab.

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更新日 2014-11-07 | 作成日 2008-04-01

SEASON2 第四回目

和紙と洋紙

今回は、紙自体について、少し詳しくご紹介します。

紙の主な構成要素はセルロースです。セルロースは次のような構造をしています。セルロースは殆ど中性で、中性の環境では非常に安定です。
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紙本美術品に使用される紙には、大きく分けて和紙と洋紙の2種類があります。

和紙の製造

紙本作品の劣化や技法は、製紙の工程や、紙の作られた時代と深い関係を持っています。
製紙の起源は、B.C.2世紀の中国にまでさかのぼります。蔡倫が麻や絹のボロ布を叩解し、抄紙、乾燥の順で紙を作ったと伝えられています。この製紙法は7世紀に日本に伝えられ、楮、三椏、雁皮を原料として和紙が作られました。

28paper02.jpg和紙作り(クリックで拡大)
28paper03.jpg和紙漉き(クリックで拡大)
28paper04.jpg顕微鏡で見た和紙の繊維(クリックで拡大)

洋紙の製造

中国からヨーロッパへは、キャラバンによって製紙が伝えられ、8世紀にはサマルカンド、12世紀にはスペイン、15世紀までには各国に製紙工場が建てられました。これらの国々での製紙は、16世紀頃まで麻と綿を原料として行われサイズ(※)も膠が使用されていました。しかし、17世紀にオランダで叩解機が導入され、短繊維で弱い紙が誕生することとなりました。その後の膠と明ばんのサイズや塩素漂白剤の使用は、ますます繊維を弱めました。19世紀にはリグニンを含む木材パルプが紙の主原料となり、サイズにもロジン・アラムの使用が主流となり、質の悪い紙が生産されました。20世紀以後は、製紙工程に紙の使用目的に合わせた添加剤の導入が次々に行われ、紙の構成要素を複雑にしています。近年では、紙の酸性化が問題になるにつれ、アルカリ・サイズや中性紙の製紙が盛んになっています。

(※)サイズ:目止め材