SEASON2-9

株式会社 絵画保存研究所

Art Conservation Lab.

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更新日 2014-11-07 | 作成日 2008-04-01

SEASON2 第九回目

日本画の状態①

今回は、日本画の支持体、絵具層及び仕立てに見られる一般的な状態について取り上げます。

日本画の劣化
日本画には、使用された素材、画家の技法、保存環境、災害、虫黴害などに起因した劣化が起こります。
33nihonga01.jpg和紙のふけによる破れ
支持体の劣化日本画の支持体である絹や紙は、経年により徐々に酸化し、脆くなります。また、支持体の色は黄色や茶色に変色します。そして、取り扱いの際などに、裂けや穴というような症状が起きるようになります。しみが発生することもあります。しみの多くは、カビに起因した茶色いしみです。
33nihonga02.jpgカビに起因したしみ
絵具層の劣化日本画の絵具の媒剤である膠が劣化して接着力が弱くなり、温湿度などの周辺環境の変化に晒されると、絵具層には亀裂や浮き上がりの症状が発生します。さらに、絵具層が剥がれて剥落となる場合もあります。染料系の絵具が用いられている場合には、光により絵具の褪色が見られることがあります。また、支持体と同様に、絵具層にもしばしばカビやしみが発生します。しかし、カビは、通常、毒性のある緑青、群青、朱のような顔料の上には見られません。
33nihonga03.jpg結晶化したしみ
33nihonga04.jpg水干絵具の褪色(引き手の下は色が鮮やか)
仕立てに起因した劣化日本画の仕立てに用いられた裏打ち紙の剥離や裂け、または組子の歪みなどに起因して、支持体の歪みや裂け、絵具層の亀裂や浮き上がりの症状が発生することもあります。