oil paintings

株式会社 絵画保存研究所

Art Conservation Lab.

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更新日 2014-11-07 | 作成日 2008-04-01

油彩画(キャンバス)の修復

岡田三郎助 作 「婦人画」の修復

okadafinal.jpg岡田三郎助作「婦人画」の修復後修復前のこの「婦人画」は、支持体としての麻布の劣化や以前の修理者による加筆、ニスの変色で画調が大きく歪められていた。
従って修理の方針はまず古い裏打ちを除去し、新しく麻布と接着剤で裏打ちを行って支持体を強化し、次に全ての後補のものを除去して、オリジナルの絵画層のみを残すことに置いた。
最後にいつでも簡単に除去可能な充填剤をつめ変色しない絵具で補彩をした。
仕上げニスは合成樹脂のニスを用いた。
 


okadabefore.jpg修復前 

okadaafter.jpg補彩の除去後 
 
 

これは神業でせうか
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 小谷野匡子さんの技術に驚嘆したのは、あのときです。私はたった一枚、岡田三郎助画伯の絵をもってゐます間に、いつか傷つき、剥げ落ちるところまで来ました。「なほして上げませう。簡単です。」と言ふ人があって、私は何気なく、その絵を預けました。或る日、私の手許に届けられたその修復の無惨な出来栄へを見たとき、私は自分の不注意から、まるで乞食のやうになったその婦人像の顔を、呆れて見守りました。
 ヤタヤのご主人に会って、小谷野匡子さんのことを聞いたのはこのときです。絵を預けてから1年も経ったかと思ひました。小谷野さんがアメリカで特殊な保存技術を学んで来た人だとは聞きながら、或る日、ヤタヤから届いて来た同じ絵を見たとき、これがあの、同じ絵だと思へたでせうか。「お宅で破損されたばかりではありません。この絵は、8回も、絵の上から修復その他の憂き目をみてゐます。天ぷら屋の店さきで、油を冠ったこともあるのですよ。」と言はれたのには呆れました。いま目の前にあるのは、あの、婦人像の、初々しい、描かれたばかりの繊細なタッチが複雑な色彩で、濡れたやうな感覚をもって、現はれたのです。「これが岡田三郎助か。これが私の持ってゐたあの絵か、」と私は驚喜しました。内緒の話ですが、この婦人像の娘の顔は、若かった頃の私の顔に、とてもよく似てゐます。嬉しさが重なって、私の胸に湧きました。今さらのやうに、小谷野匡子さんの絵画保存技術に驚嘆した訳です。