版画及び水彩画、素描の修復
版画や水彩画は紙の上に制作される。従って用いられた紙の状態によって作品の寿命が左右される。
紙は、酸性になるとセルローズの分子が加水分解して、ボロボロになってくる。
紙の修復では
- 酸性化した紙の脱酸処理
- しみ抜き
- 裂けや穴を直す為の補紙
- 黄化したセロハンテープの除去
- 絵具の剥落止めと剥落部への補彩
が行われる。
紙の作品の保存上大切なことは、適切な環境を維持することである。
光は50ルクス以下、湿度はRH(相対湿度)40〜50%に調節する。
マットは中性紙で作り、糊も中性水でうすめて用いる。
グロンメール「風景」ペン画/紙 修復前(クリックで拡大)このペン画には、カビに起因したFoxing(茶色のホシ)が多数発生していた。
グロンメール「風景」ペン画/紙 修復後(クリックで拡大)しみ抜きは紙とインクに安全な薬品を用い、吸引装置上で行われた。
脱酸処理水酸化カルシウムや重炭酸マグネシウム液に浸して、酸性を中和する。この処置により、紙のpHは8.4〜8.8を示すようになる。この処置を受けた紙は、この後数百年を経てもなおpH7.0〜8.0を示し、相当の強度を保つ。
額装マットは中性紙ボード二枚で作る。一枚を台紙とし、もう一枚は台紙に重ねる窓枠となる。
絵を台紙にとめるには、和紙の小片と水性糊を用いる。