SEASON2 第三回目
紙本美術品の修復②
今回は、紙本美術品の修復処置についての二回目です。作品の美的価値を回復させるための処置を取り上げます。
作品の美的価値を回復させるための主な処置
しみ
- しみは、観賞者に不快感を与えるという場合に除去を行います。大きく分けて、光によるブリーチ方法と薬品によるしみ抜き方法があります。
- 光によるブリーチ(bleach)
- 太陽光によるブリーチとライトブリーチがあります。光酸化反応で染みの原因物質を酸化させ、水に溶けやすい形にして取り除きます。純水又はアルカリ性の水に浸し、紫外線をカットした光にあてます。色々なタイプのしみに効果があり、変化が遅いのでコントロールしやすい方法です。しかし、 紙やメディウムに光酸化が起きて劣化する場合があるので注意が必要です。明礬でサイズされた紙やリグニンを含む紙では、黄化や暗色化が起きる可能性があるので使用できません。
- 薬品によるしみ抜き
- しみ抜きに用いられる薬品には、ミネラルスピリット、過酸化水素水3%液をアンモニアでアルカリ化したもの、水素化ホウ素ナトリウム0.25%などがあります。漂白剤を用いる場合は純度の高い薬品を使用します。使用の前後には必ず洗浄を行ない、余分な汚れや漂白剤が残らないように注意します。残った場合、しみの再発や紙の劣化などが起こることがあります。この他、酵素を用いてのしみ抜き法もあります。
破れ傷、欠損部
- 破れ傷は、細くちぎった長繊維の薄い紙を裏面から水性糊で貼り、補強します。破れ部分に欠損がある場合には欠損部に対する処置を行います。
- 欠損部は、オリジナルの紙に似た紙を欠損部と同じ形に切り取り、継ぎ部分に段差が出ないよう、紙の縁を薄く削るなどして水性糊で貼り合わせます。欠損部が描画部分にある場合には、埋める紙に周囲に合わせて色を塗っておきます。紙を埋めた跡で補彩部分の色を調整することもできます。